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STUDY KYOTO MAGAZINE

小説を通して見る京都:森見登美彦さんインタビュー

森見さんと歩く作品の舞台

今回のインタビューでは、まず森見さんと一緒に京都の叡山電車「出町柳駅」を出発し、『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』などで登場する、「賀茂大橋」→「鴨川デルタ」→下鴨神社の「糺(ただす)の森」→「百万遍(ひゃくまんべん)交差点」と巡り、喫茶店「進々堂 京大北門前」に入って、ゆっくりお話をうかがいました。私の他にも、京都の大学院に通う留学生の王璇(オウ・セン)さん、史若瑛(シ・ロイン)さんも参加し、3人で森見さんにいろいろな質問をしました。みんな、もちろん森見さんの作品のファンで、私も含めて、とてもテンションが高かったと思います。自分が好きな作家さんと作品の舞台をまわる機会なんて、人生でそうそう起こることではないですから!

「鴨川デルタ」では、みんなでラムネを飲んだりもしました。なぜ突然ラムネが出てくるの?と思ったあなた、その答えは森見さんの最新刊『四畳半タイムマシンブルース』の中にあります!ラムネはこの物語を象徴するアイテムなのです(あくまで、私の想像ですが…)。

今回、色々な場所をまわった中で、私は下鴨神社が一番好きな場所です。あの神社の落ち着いている感じが好きだからです。

森見さんインタビュー

インタビューでは、作品のことや作家としての執筆活動のことなど、色々なことを質問し、森見さんはゆっくり、じっくりお話ししてくださいました。ちょっと長くなりますが、ぜひ最後まで読んでください!

ちなみに、インタビューで入った喫茶店「進々堂 京大北門前」は、『夜は短し歩けよ乙女』の重要なシーンで舞台となったお店で、今回お店の方のご厚意で、小説の登場人物と同じ席に座って、お話をうかがうことができました!(店内での写真撮影は、特別に許可をもらって行っています。)

――森見さんが小説を書かれるときに、「まずこれは決めて書き始める」というような、決まった進め方はありますか?

あまり最初から全部きっちり決めて書くと、反対に書きにくくなってしまうタイプなので、決まったやり方というのはないですね。書く前からすごく考えて書いたものもあれば、結構行き当たりばったり的に進めたものもあります。作品ごとに、書き始めの核になるものも変わります。例えば、『有頂天家族』は最初に主人公や周りの登場人物のキャラクター設定を決めて、そこから物語を書いていきました。『夜は短し歩けよ乙女』の場合は、最初に思いついたのは、タイトルです。『ゴンドラの唄』という日本の歌の歌詞に出てくる「命短し恋せよ乙女」という印象的なフレーズから考えたタイトルなのですが、そこから、「短い夜にどこを歩くんだ?」と考えて、「京都で夜の街を歩くんだったら先斗町かな」というような感じで、つなげていきました。

本当に、話を作る時の進め方はその時々で違いますし、いまだに毎回、模索していますね。デビュー当時は、20年もすれば、悩まずに次々と話が書けるようになれると思っていましたが、実際にはそんなことはなかったです。笑

――書けないスランプの時、自分にどうやってインスピレーションを与えていますか?

色々な本を読んだり、外に出かけたり、普通なことをしています。「これをしたら」っていう、特別な魔法みたいなのはないですからね。書けないときは、「書けない…」って家でしょんぼりしていたりもして、妻に「明日には書けますよ」って、慰めてもらっていることもあります。笑

最近は、ある程度あきらめるようにもなってきて、「明日は書けるかも」と考えて、あまり無理に書こうとはしないです。毎日、デスクに向かってなにかを書くことはしていますが、うまくいかなくても気持ちを切り替えて「明日頑張ろう」と思うようにしています。その代わり、毎日書く、ということは決めてやっています。

「今日はちゃんと書けた」っていう日を増やして、「書けない…」っていう日をできるだけ減らしたい、というのが目標です。

――森見さんの作品には、大学生が出てくるものが多いですが、今でも学生と交流を持ったりして、現在の大学生の生活などを調査することもありますか?

実際に交流する機会は全然ないので、今の大学生の実態とかは、わからないですね。あまり、「今の大学生像」として書いていないですから、『四畳半タイムマシンブルース』も、最近の出版作ではあるけど、今の大学生とは、全然違うと思うんですよね。

 

――意外と通じるところはたくさんある印象です。

それならそれで、喜ばしいことです。笑

デビューの頃から僕が書いている大学生は、結構古風なイメージで、現代の学生というよりは、ちょっと古めかしい学生。「妄想の学生」というか。なので、現代の学生の実態と違っても、その違いは目立たないのかな、と思います。

もちろん、小説の中で学生を書くためには今の学生の話を聞いて、よく知って書かなければっていう書き方をされる方もいますが、僕の場合は、自分の中の妄想の学生を書いているので、「こんな学生いない」というのも、「あり」なわけです。リアルなものを写実的に書くというより、自分の中にあるものを表現している感じです。

――たくさんアニメ化されているので、アニメから森見さんの作品を知る方も多いと思いますが、それについてどう思われますか?

アニメから僕の作品を知ってくださる方は結構多いです。アニメを見た方が面白いと感じて、その原作やほかの小説を読んでみようと本を手に取ってくれるのは、本当にありがたいですね。

留学生の皆さんは、僕の本を読む場合、翻訳版を読んでいるんですか?翻訳版は、僕自身その言語がわからないので、皆さんが日本語版と同じ印象を持たれるのか、興味があるところです。自分の書く日本語の音や流れ、リズムで物語を進めているところもあるので、その雰囲気は翻訳版に反映可能なのか、とかね。

 

――日本語版で読んだり、翻訳版で読んだり、字幕付きのアニメを見たり、いろいろですね。独特の表現があるので日本語版で読むのが面白いと思いますが、アニメだと画像もあってわかりやすいです。そこで、森見さんから見た、原作とアニメ作品の違いを教えてください。

結構たくさんアニメ化していただいていますが、アニメ作品は監督によって雰囲気が変わりますよね。監督の性格や、アレンジの入れ方・度合いなどが、それぞれ違いますから。

ただ、原作者の辛口目線で見ると、原作の世界観と少し違うなと感じる部分も、観る人は「そうそう、こんな感じ」と思うのかもしれません。自分の世界観があるので、原作者はうるさいんです。笑

――最後の質問です。最新作『四畳半タイムマシンブルース』では、タイムマシンで過去に戻る設定がでてきますが、森見さんがタイムマシンを使うとしたら、いつに戻ってみたいですか?

小学校低学年ぐらいの頃(1980年代)に、戻ってみたいですね。ちょうど日本がバブル景気のころで、今と全然雰囲気の違う社会だったわけですが、僕は小学生だったのであまりわかっていなかった。その時代に戻って、社会や町がどんな雰囲気だったのか、実際に見て、感じてみたいです。子供目線の断片的なことしか覚えていないので、その外側で何が起こっていたのか、とかね。

 

――森見さん、ありがとうございました!

最後に

今回森見さんとのインタビューで、森見さんの作品について、森見さんご自身からお話を聞くことができ、新しい発見や色々な考え方ができました。森見さん、本当にありがとうございました!これからのご活躍と、新作を楽しみにしています!

森見さんは、「物語の中では自分の『京都』を書いている、それは一般的な京都、実際の京都とは違うかもしれない」というようなことをおっしゃっていました。私の感じる京都も、他の人の感じる京都と違うのかもしれません。そしてそれぞれ全部がきっと正解なのです。私には自分の京都を舞台にした小説は書けませんが、一度しかない人生、京都での留学生活を後悔なく終えられるよう、京都でしか体験できないことを思いっきりやろうと強く思いました。

 

(文:同志社大学 リ・ホーンエン)

 

<森見登美彦(もりみ とみひこ)経歴>

1979年、奈良県生まれ。京都大学農学部卒、同大学院修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を、10年『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞を受賞。その他の著作に『四畳半神話大系』『有頂天家族』『熱帯』などがある。

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